世界を席巻する 「なんちゃって デイジー使い」こと「七片 藍」は、
忌まわしい疫病に その麗しき身を蝕まれ 死病患いの身となっていた。
（でも インフルエンザ）
しかし そこに、「電脳薬師ねこひげ」 が復活せしめた究極の妙薬！！
桃缶。
古い書物を紐解けば、その存在は歴史の闇へ ひた隠しにされて来た秘薬であると云う。
かつて それを所有する者には、永遠の生命すら約束されていたとも伝えられているのだ。
今こそ我が手に！
病魔を捻じ伏せ、再びこの世界に 偉大なるデイジー千年王国を築くべく、
七片は 同志・ねこひげの傑作を 処方するのだった。
聞けば 彼の粋な計らいにより、キュートな アンテナ娘が 秘薬を手にして七片邸へ訪れると云う。
厚さ 77mm の 鋼鉄製扉が ノックされた。
「ギギギギギギ・・・・。」
小柄だが、美しい少女だ。
ややあって少女は 口を開いた。
「お兄ちゃん」の一言に、私は一瞬 心地よい目眩すら覚えた。
私の趣味を知ってか知らずか、少女は、名を 「柏木（ピー♪）音」と云う。
糸の様な、か細い指が しっかりと宛われた円筒形の物体は、金属性のようだ。
側面には見た事の無いような有るような、極めてわざとらな面妖装飾が 施されている。
これが伝説の桃缶か！
少女も 長旅で疲れたであろう。
私は少女 屋敷の中へと招き入れ、執事を呼びつけ 茶を薦めた。
一息入れると、少女が席を立つ。
床に伏せった私の 傍らまで歩み寄って来た。
どうやら 薬の処方を 手助けしてくれるようだ。
好意を無駄にするつもりは無い。
私は 彼女に任せる事にした。
・・・が、
この状況を どうしろと云うのだ。
伝説の秘薬を 復活させて貰いはしたものの、それを使う事は叶わない。
少女も 困惑している様子だ。
それ以上に 私は やりきれない気分になった。
まさか この段階で 特別な器具が 必要になるとは。
同志よ・・・不覚であったな。 お互いに。
一室に 寒い空気が 漂う中、私は これが パンドラの箱であるかも知れないと悟った。
そう、伝説は伝説のままで いいのだ。
朦朧とする意識の中で 私の瞳に映るのは、
バツの悪い表情を浮かばせる 少女であった。
私は 再び執事を呼びつけ、少女に短刀を持たせて 同士のもとへと送るように云った。
同士の邸宅では、その顔に泥を塗られた少女によって、数時間後に 血の雨が降るであろう。
長き乱世を 恐怖の淵に陥れる悪魔、その名は インフルエンザ。
悔やむまい、恨むまい、驚く事もない。
大いなる野望を阻むのは、いつでも小さな障害なのだから。
結局 治らんのか！
（絵・ねこひげ おはなし・七片 藍）