■無銘■
・全長 ・3000mm
・刃渡り ・1200mm
・刃材 ・不明
・刀芯 ・不明
・重量 ・122kg
・造師 ・不明
・価格 ・10,000セル
近付いて観る


・こんにちは、遊びに来てみたら……。
 老師さまも居ないのですね。
 これはちょうど、このあいだ私が来た時に仕入れた物でした。

 二人とも不在のようですから、代わりに私が御説明致します。
 管理所に登録されている物では大型に分類されるので、
 この武器は私も詳しいのです。

 とにかく重量が凄くて、大人が二人がかりで運びました。
 最初は大きな屋敷の飾り物だと思われていましたが、
 装飾の傷み、くすみ、それと……何度洗っても消えない血痕から、
 これが実戦用だと分かり、装飾品には該当しませんでした。
 このお店では模造品を扱わないからです。

 老師さまが仰るには、実用に耐えるかどうかは疑問だとか。
 その重量から、打ち下ろしで使うしかなさそうです。
 それ以前に、これを振り回せるだけの腕力が必要になりますから、
 用途と使用者を選ぶ品となります。

 斧頭には、変わった服を着た長髪の女性が浮き彫りにされています。
 刃に向かって手を伸ばすように描かれ、まるで招くような仕草です。
 石突(柄の端)には、見たこともない獣の半身像が彫られています。
 その上に宝石が据えられていますが、霊的作用は微弱でした。

 瘴気の濃度は、ほかの無銘器に比べると薄く、
 食べ物や体調に悪影響を与えることはありません。
 ただ、あまりに猟奇的な雰囲気から買い手がつかないでいます。
 老師さまは処分するつもりでいるようです。

 何人かの持ち主を転々とし、これについての云われは曖昧なのですが、
 最初に譲り受けた方の話では、持ち主は姿を見せなかったそうです。
 奥の部屋から声だけで応対し、持ち帰らせたのだとか。

 えぇと……喋りすぎでした、御説明は以上です。

 それにしても本当に誰も帰ってきませんね。
 こんなに無用心で大丈夫なのかしら、このお店……。


・斧を書くのは大好きです。
BACK