-知っておきたい 天使・聖獣と悪魔・魔獣-
■発行:西東社
表紙2点・本編35点を担当しました。
専門的すぎず、手軽で読みやすいのではと思います。

■画稿仕様は全て縦長です。
右ページの右側に配置されるため、
左へと続く解説文を見つめるような左向きを多く描きましたが、
マンネリ化しないよう、やむをえず右向きも加えています。

この仕事で最も悩まされたのは「どう収めるか」でした。
まず担当した各絵の解説文は事前に知らされていないため、
解説文にない特徴を描くかどうかは相談が必要でした。
また、画稿は縦長なので四足動物より人物に向いています。

あまり納期に余裕がなかったことに加え、
ソフトのエラーで数時間分の作業が無駄になったりと、
時間との戦いも多かった仕事です。

とは云え、自分の作業速度が底上げできたことと、
解説書の挿絵を描いてみたいと云う願いも叶い、
総合的に学ぶことが多く発注に感謝しています。

■10点程度なら公開可能となりましたので、
  トリミングしたものを掲載いたします。
  各記述は、本書が手元にある状態での所感です。

残りはラフですが、そちらは本書を御覧下さい。
Amazon、紀伊国屋書店などでお買い求めになれます。
000■ルシファー & ミカエル (表紙用) ラフ1 ラフ2
35枚が完了して一ヶ月後、
「表紙の雰囲気を統一したい」と、急きょ描くことになった絵ですが、
人物は縦長に適しているのか、とても描きやすい絵でした。
(ミカエルは反転して使われています)

また、この2枚のみフルデジタルです。
以下35枚の線画は紙面に起こし、陰影のみCGです。
上記の通り、もともと予定になかった絵ですので、
本書中の挿絵には使われておらず、表紙にのみ使用されました。

公開分を壁紙調にしてみました。([1600*1200] [1024*768] [800*600])

001■リヴァイアサン ラフ
本画の最初の一枚ということで、
「縦に収めなければ」という気持ちが強すぎたようです。
半身を除する発想もなく、なんとなく窮屈な絵になりました。

002■ベヒモス ラフ
資料に従った通りに描いたとは云え、
いまいちモンスターっぽさが欠落している気がします。
納期に対しての35枚を、途方に暮れた思いで描いていました。

003■ケルベロス ★ラフ
まだ縦に収めるのを意識していたため、窮屈です。
三つの頭部が「取ってつけたような感じ」なのは、
三頭だからではなく、私が悪いからです。

004■クーシー ラフ
後脚が遠すぎました。
伝承に倣ってスコットランドの犬種にする予定は、
途中から情報がややこしくなった上、
長毛の犬ということなので、諦めてこの絵になりました。

005■セイレーン ラフ
「こう云う羽根の描き方はどうかな?」と試しに始めた一枚です。
以降、この描き方で固定されています。
朽ちた葉のようで、なんとなく古臭さがありませんか?

006■クラーケン 本画/ラフ
まとめだけは上手く行った気がします。
ただ、この仕事の絵を描く上でグレーを多用しづらかったので、
思い切って白基調にしてみたら……ただの手抜きに見えました。

007■ヴリトラ ラフ
貧相です。
あまり提供資料を無視しすぎてもダメなので、
サイト作品との落差については触れないで下さい。

008■フェンリル ラフ
当初は「ヘルハウンド」が来るはずでしたが、
ラフ段階で欠番となり、替わりに入ったのがこれです。
後半身には特徴がないので、大胆にバッサリ切り落としました。
もっと獰猛な感じすれば良かったと反省しています。

009■キマイラ ラフ
「真ん中に山羊ってなに?!」とブツブツ云いながら描きました。
頭部から尾部にかけて「省略できる要素」がないことから、
全身を入れる必要があり、指定の枠から出ています。
これを含めた何点かは「右ページをみつめる」を忘れていました。

010■オルトロス ラフ
なぜ向かって左の顔の失敗に気付かなかったのか、
今となっては自分でも分かりません。
右脚の付き方もおかしいです。
首の大蛇もやっつけ仕事になっています。

011■ヤマタノオロチ(八俣大蛇) ラフ
それぞれの頭部を、少しずつ別々の向きにするのが大変でした。
尻尾の表現が上手く行ったかなと思いましたが、
改めて見ると、別にそんなことはありませんでした。

012■ヒュドラ ラフ
鱗(うろこ)の表現に成れてきたので、少し楽でした。
「フェンリル」と同様に、後半身を切り落としています。
ヤマタノオロチ同様、それぞれ表情を考えるのが大変でした。

013■バジリスク ラフ
食玩みたいです。
提供資料に「ただの蛇と変わらない」とあったので、
変に飾ることはせず、そのままのデザインにしましたが、
本文中では割と大きく掲載されていて驚きました。

014■アンフェスバエナ 本画/ラフ
あまり悩まずに描けました。
彼の「前後」は一対の脚で判別されることになりますが、
それは解説で語られるでしょうから、目立たせていません。
土産物屋さんで置いてそうな感じですね。

015■コントン(渾沌) ラフ
「尻尾をくわえてグルグル回っている犬」ですが、
立っていると、パッと見てよく分からない気がしたので、
尻尾を咥えたまま伏せている格好になりました。

ここから続く漢字の獣は、「四凶(しきょう)」と呼ばれます。

016■トウテツ(饕餮) ラフ
業突張り(ごうつくば・り)っぽい顔にしました。
今の日本なら「人面羊」と呼ばれそうな外見ですが、
体は牛であるとの説もあるそうです。
シンボル化されると、また違ったデザインになるようです。

017■キュウキ(窮奇) ラフ
「虎に翼」という諺(ことわざ)もあるくらいですから、
もっと強そうな絵にすべきでした。
飛び掛かるような構図で半身を隠しても良かったのですが、
白虎で半身を除した上、018番もあり、やむを得ずこの構図です。

018■トウコツ(檮木兀) ラフ1 ラフ2
名前の「木兀」は、木偏に兀で一文字です
この絵で背面を使ったので、前述の「キュウキ」が正面になりました。
「虎に似ているが、虎より大きい」とのことで、
前脚の長さについては、あまり重きを置いていません。
ちなみに「コツ」の字については、外字エディタの参照で「674C」です。

019■ユニコーン ラフ
注目すべきは角に集中すると考え、半身を除した絵です。
しかし頭が小さくなったので、なんとなく痩せて見えます。
馬は難しいと思った一枚でした。

020■フェニックス ラフ
後述する「朱雀」のことを考えずに描きました。
サイト作品の「朱雀」に似たような感じがします。
両翼を広げられないのが課題でした。

021■ペガサス ラフ
「キュウキ」と同様に翼のある獣ですから、
まとめづらさに関しては最強かも知れません。
大きく羽ばたかせたかったです。

022■バロン ラフ
バリ島に見る派手な姿は装飾なのでは……と思い、
獣としての彼を描くことだけに集中しました。
「実在するなら」という仮定のもとに描いていますが、
描き直したい一枚です。

023■ガルーダ ラフ
表紙を除くと、これだけが縦長仕様に適していたと思います。
とは云っても翼がありますから、正面にするか側面にするか……。
クチバシを強調したかったので、後者に決まりました。
これも、バリ島に見る装飾の強いものとは分けて考えています。

024■スレイプニル 本画/ラフ
「脚が8本って、多ければいいってもんじゃないでしょ!」と、
おそらくこれを描いたことのある人は、皆そう思ったことでしょう。
脚をシルエットにしないと前後が分かりづらくなるとは云え、
縦長に収めるために頭をひねった絵です。
ラフとは随分変わってしまいました。

025■グリフォン ラフ
「キュウキ」、「ペガサス」に続き、
縦長でなければ大きく翼を開かせたい絵です。
前述の「キュウキ」と後述する「スフィンクス(女)」で、
すでに両翼を描く構図を使ってしまったため、側面になりました。

026■スフィンクス ラフ1 ラフ2
35体の中で、これだけが2種類です。
一回目のラフ提出で「ギリシャのスフインクスも」と追加があり、
二回目のラフで描き足してから本画に入っています。
本画も別々に描かれており、編集時の合成にお任せでした。

027■ハクタク(白澤) ラフ
ラフは老婆のようですが、提供資料に「醜い顔」とあったので、
本画では改めて、格好良さの欠片もない顔にしました。
神獣ですから、大きな図体で威厳を持たせる方向にしています。

028■ヤタガラス(八咫烏) 本画/ラフ
一番気に入ってます。
実在する動物を上手く描くのは、
実在しない動物を上手く描くのと変わらず難しいです。

029■シーサー ラフ
上のヤタガラスに続き、まとめ易かった絵ですが、
巻き毛の表現が大ざっぱ過ぎて小学生みたいな表現です。
ところで狛犬とシーサーの差が分からないままでしたが、
外見上の違いはあったのでしょうか。

030■白虎 本画/ラフ
仕事を終えた翌月末になって気付いたことですが、
新紀元社の「幻想動物博物館」を反転させたものと似ています。
本画にあたってポーズを変えたら、こんな偶然がありました。
誓って申し上げますが、見ながら描いたわけではありません。

031■玄武 ラフ
亀だけは数年前のサイト作品よりポーズが気に入っています。
しかし蛇は「巻きついている」という感じがしません。
亀は気だるい雰囲気が似合うと思います。

032■青龍 本画/ラフ
これより前に描いた蛇などのおかげか、
描く前は負担だと思っていた鱗が楽になりました。
弟に気に入られた龍です。

033■朱雀 ラフ
どうやってフェニックスとの差を作るかで悩みました。
これについても同じですが、翼を広げると横に長くなります。
ほかの絵と同じような構図にならない努力も必要でした。

034■シームルグ ラフ
翼を広げていない分だけ描き易かったのですが、
脚を貧弱にしすぎたせいで一輪挿しのような格好です。
頭部の冠羽根が良く描けたかな、と思っています。

035■ファーブニル(ファフニール) 本画/ラフ
サイト作品にもあるファフニール。
踏みつけている金貨をもっと増やすべきでしたが、
最後に描いたものなので、気力が尽きかけていたかも知れません。
半身を除した割にボリュームがあったので、描き易かったです


以上、37点でした。

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