-知っておきたい 知っておきたい 伝説の魔族・妖族・神族-

■発行:西東社
本編でモノクロ15点を担当しています。
2008年9月から11月にかけての作業です。

■このシリーズも5冊目を手掛けることになりました。
画稿仕様は今回も同様で、例によって全く余裕がなく、
同時期に3件あって頭の引出しも空っぽです。

半面、良い具合に手首の力も抜けていたので、
大半の悩みは「どのように描くか」に集中しましたが、
一般的なイメージで固める必要もありますので、
あくまで“(モンスターの)紹介”を念頭に置きました。

とは云え、個々の作業が粗っぽいのも事実でした。
どうすれば時間を短縮できるか、そればかりが募り、
ここ最近の仕事では反省の多い結果になっています。

総数は少ないので、一部を合成して公開致します。
夢は大きく
万事ほどほどに
小さいことを軽んじてはいけません

■サラマンダー
炎はモノクロで描きづらい表現のひとつだと思います。
できるだけ濃淡のある塗り方が指定でもあったので、
実際の合成編集で、どのように出るのか分からないまま描きました。
あまり爬虫類っぽくせず、カサカサ乾いた表皮が目標です。

これを始めとして、今回はウンディーネ(水)を除く「四大」を描いています。
■ペリ……画像中央
どこかで聞いた覚えのある名前は、最後まで思い出せませんでした。
ラフから描き起こす際、左足のつま先を出すかどうかで悩んだ覚えがあります。
とくに詰まることもなく描けましたが、編集後を見ると全体的に白く、
とくに翼、もっとコントラストをきつくしても良かったように思えました。

■ジン
これも「サラマンダー」と同じく、煙の表現がネックでした。
編集後を見ると上手く合成されているように見えます。
胸部分に余裕がない描き方をしたので、煙の量を減らす予定でしたが、
試してみたら余計に窮屈に見えたので、仕方なく維持させました。

■ムスッペル
ペリと同じく、もっとコントラストを意識するべきでした……が、
このテキストを書きながらオリジナルファイルを確認してみると、
今回は全体的に薄く印刷されているのでしょうか。
ともあれ、炎部分が上手く合成されて安心しています。

■ノーム
次のドワーフとの違いとして、表情やポーズで考え込みました。
ドワーフを「気難しくて偏屈」という感じに捉えるならば、
こちらは多少の愛嬌がある老人……という感じでしょうか。
どちらも働き者のイメージで描いています。

■ドワーフ
ドワーフと云うと戦士か鉱夫のイメージがあるので、
どちらで描くかを考えた末、私の脳はツルハシを優先しました。
どうしても先述の「働き者のイメージ」が強いらしいのですが、
その半面、小物が少なくて描き込みも浅く感じてしまいます。

■コボルト
犬頭のイメージがあったのですが、そうでもないようですので、
「こんな感じの妖精が居てもいいのでは……」という気持ちで描きました。
「道端で擦れ違っていても気付かないような、存在感の薄い妖精」が目標です。
編集後は項目の枠が髪にかかっていますね。

■シルフ……画像左端
ポーズは上手く行ったかな、と思っています。
なんとなく「優雅に飛び回る」というのはありきたりに感じたので、
小鹿が地上を跳ねる感覚で空中を移動するイメージです。
飛んでいなければ人間と変わらない絵になっています。

■エルフ……画像右端
楽器(手琴)が指定だったので、弓矢の方向はなくなりました。
ゴテゴテした装飾品の多い衣装は「踊り子」のイメージがあったので、
私生活と云うか、ちょっと「いつもの格好」をしている感じで描いています。
もともとが「美人+長い耳」のイメージが先行しているので、
たまにはこう云うエルフもいいかな……と思っています。

■ピクシー
「こましゃくれたハナタレ小僧」がイメージでした。
ピクシーと云うとスプライトのような小妖精を思い浮かべますが、
この絵も指定に沿った方向で描かれているので、こんな感じです。
左手に持っているのは、裁縫針をナイフ代わりにしたものです。
でも太すぎますよね。

■パック
シェイクスピアの「真夏の夜の夢」に出て来るパックとしては、
映画「いまを生きる」の少年ニールが演じたものしか知りません。
彼のイメージが強かったせいか、くせっ毛の少年が浮かびました。
この絵のあたりから時間が厳しくなり、両手を修正しきれずにいます。
おまけに笛の形もおかしいです。
■ヤクシャ
ラフでは上半身が裸でした。
小鬼を踏んでいるにしては大人し過ぎるポーズなのですが、
男神に踏まれる様は「勇ましい」と感じるので、
こちらは多少の女性らしさと云うか、「ちょっと踏む」感じにしました。
これらは指定の内ですが、本編では触れられていません。

■ボラロ
初めて聞く名前でした。
耳、足(指や爪)が前後逆になっており、ヒザがありません。
指定や本編では「巨大な男根」となっていますが、
云われるまでもなく、なんとかして自主規制をかけています。
「転ぶとなかなか起き上がれない」というのが気の毒です。

■ヴィリィ
提供資料に従って全裸にしました。
とんでもないミスをしているのですが、もう修正が利きません。
これも初めて聞く名前だったので、色々考えたものの、
結局は資料に沿う形での作業になっています。
なんとなく、ジュディ・オングの歌が聞こえてきそうです。

■グリーンマン
ちょっと前にテレビで紹介されていたのを思い出しました。
ツタ植物で生い茂った姿を描きたかったものの、もはや時間切れで、
石組みで作られたグリーマンの像をもとに描いてまとめました。
「これで満足に歩けるのか」とクレームが入りそうな姿になっています。
この一枚は、しばらく私の反省点として長生きしそうです。


以上、15点でした。

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