-野生動物 最強決定戦-



(★文庫本サイズです)
■発行:扶桑社
描き下ろし分7点を担当しています。
2009年6月の作業です。

(その他の情報は、Amazonを御覧下さい)

■「実在の動物」を扱う初めての仕事でした。
ひとつ前の仕事が難しい題材で、時間を食ってしまい、
この仕事は本当にギリギリまでやっています。

怪物が専門なら動物は楽勝だと思われそうですが、
実は怪物1体を描くよりも難しい仕事になります。
理由は、「ウソが描けないから」です。
「絵が描けること」とは別に、知識が必要な作業でした。

例えば「犬を知っているか」と聞かれて「はい」と答えても、
「犬の指が何本なのか」、「歯の数や配置は?」、
「指の数は前後で異なるか」まで聞かれたとしたら、
それを答えられる人となると、そう多くはありません。

今回の仕事は、まさにそんな仕事です。

■アカカンガルー
最初から「難しいなぁ」と感じた一枚でした。
四足歩行する動物とは色々と作りが違うので、
自分の中にある「多分こうだろう」が、全く当てになりません。

なお、この絵ではキックしているように見えますが、
実際のボクシングで脚を駆使するかどうかは分かりません。
ただ、この高さくらいにはジャンプできるそうです。

ボクシング中は、なんとなく迫力が出しにくいので、
飛びのいた瞬間に片脚が当たった感じの構図です。
■アフリカゾウ
ラフが一発で通っています。
きちんと体高を含めずにラフを始めたので、どこか寸詰まりです。
脚はもう少し長く描いたほうが良かったかもしれません。
後述のシロサイ同様、もっと体表の質感を重視すべきでした。

アフリカ象とインド象では、鼻先の指状突起の形が違うため、
ちょっとオーバーなくらい意識しましたが、再現できているでしょうか。

■アメリカバイソン
真正面と真横で2枚のラフがあり、1枚目が採用されました。
これはとにかく頭部の作りが描きづらく、気付くと真っ黒けになるので、
できるだけ描き込まない方向でまとめるつもりが、大失敗でした。
右半分にやる気が感じられません。

反省するしか出来ない一枚です。
絵をかじったばかりの人間が描いたように見えます。
■カバ
描き終えた後、「この牙はないはず」と指摘が入りましたが、
クライアント側の資料写真では見づらくなっていたようで、
私の資料を送った後、ようやく通過した経緯があります。
カバに限らず、動物は写真資料の撮影角度が重要です。

下顎から突き出ている牙は、個体によって捻じれ具合が異なり、
口からはみ出そうな角度に捻じれているものもあるようです。

■シロサイ
角、耳、口、そして頭部全体のバランスが難しい動物です。
ナスのように湾曲した頭部に絶妙な部品の配置。
ちょっと角度を変えるだけで不安になりました。

アフリカゾウと同様に体表の質感を重視すべきでしたが、
この段階で時間も迫っていて、泣く泣く諦めた憶えがあります。
全体的に反省点ばかりの一枚になりました。

■ジャイアントパンダ
マスコット的な扱いしか知らないと可愛いだけの動物ですが、
実際は狂暴な動物だと知っても、その認識を改めるのは難しいです。

とは云え、どこまでも愛玩動物風な雰囲気から抜け出せないのは、
この動物が長らく愛されている歴史より、その外観によるのでしょう。
クジラなみに大きかったとしても、やはりどこか可愛らしいですよね。

■シマスカンク
室内でガスを出されると、その部屋は一年くらい使い物にならないとか。
至近距離では失明の危険すらある、強烈な放屁をかますスカンクでも、
外見は無害にすら見えるので、やはり描いても恐く見えません。
白い模様は角度や個体差によるのか、少し異なるように見えました。

最大の不安要素は、指の数です。
どれだけ調べても行き当たらず、見える範囲で決定しました。

以上、7点でした。

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