-よくわかる「ゲーム世界」のモンスター事典-


■発行:廣済堂文庫
モノクロ描き下ろし分8点を担当しています。
2010年2〜3月にかけての作業です。

(その他の情報は、Amazonを御覧下さい)

■「ゲーム世界」というのがポイントです。
「神話とゲーム世界のモンスターって何が違うの?」と云うと、
多少のアレンジが入ったり、解釈の違いなどから、
神話や民間伝承とは異なる姿をしている場合があります。

本書では、あえてその「ゲーム上の姿」を主眼に据えています。
いわば(ゲーム世代に云わせるところの)一般的な感覚で、
モンスターを解説した一冊ということです。

そのため、変にアレンジを加えるようなことはしていません。
「あぁ、うんうん知ってる」と思われる感じで描いています。

「神話で記された姿は想像しにくい」と感じる人や、
むしろゲームでどう変化したのか興味がある人は、
お手にとってみてはと存じます。

この仕事は、珍しく電話での打診でした。
普段はメールで依頼が来るため、ちょっと新鮮です。

それはともかく、この仕事も別件と並行でした。
割り算で描き込みが少なくなるのは、私の悪い癖です。
手順の見直しを含め、頭の整理も必要になりました。

■ウンディーネ
もう全裸を書くことに全く抵抗がなくなって来ました。
メガドライブの「シャイニング・アンド・ザ・ダクネス」に登場する、
妖精サイレンの登場シーンが好きだったので、
回転を加えて水面から飛び出すところを描きました。

顔は正面じゃないほうが良かったかなぁ。



■鬼
「できれば男女で」と云われていたため、
時間を食うであろう鬼女(きじょ)から描いています。
大男と女性の組み合わせは大好きです。
でも「美女と野獣」は観たことがありません。

鬼というと、私は「まんが日本昔話」の世代ですので、
あの独特な背景描写を引っ張ってみました。
毎週色々なタッチの絵柄を見られましたので、
実は贅沢な世代なのだなぁと、しみじみ感じます。

■ミノタウロス
予定では、もっと格好よく描けるはずでした。
疲れていると脂っこいものを食べたくなくなりますが、
絵も同じで、濃い表現が出しにくくなるようです。

牛特有の、あの突き出た背中を意識したのですが、
実際にやろうとすると、ずんぐりして取り回しづらいです。
もうちょっと工夫してラフを進めるべきでした。

■メデューサ
ゴルゴン三姉妹の一人。

頭部以外はパッとしない人なので、
あえて表情と背景の対比だけで仕上げました。
ペルセウスが生首を掲げるシーンも良いですが、
単体で描かねばならないので、顔に重きを置いています。

(蛇の)生え際が気持ち悪いです。
■スフィンクス
「実在したら意外と地味なのでは」と考えながら描きました。
実家で飼っている猫が、よくこんなポーズで見つめてきます。
大抵は「お腹空いた」の合図です。

関係ありませんが、中学時代の女性教師は、
みんなこんな顔をしているように思っていました。
未だに「教師=怖い」という感覚が抜けきらない私です。

■バハムート
ドラゴンではないものがドラゴンとして定着してしまい、
「バハムートと云えば」の特徴的要素もあまりないので、
全体的に似たり寄ったりなデザインになりました。

ところで前脚と後脚のあるドラゴンの場合、
「日常生活は二足歩行」と考えるのは私だけでしょうか。
いずれ四足歩行で活動することを忘れてしまいそうで、
そんな人間っぽいドラゴンは嫌だなぁとか思っています。

■ベヒーモス
これが頑強な体躯として描かれるのは、
名前の「〜モス」が、マンモスから来ているからなのでしょうか。
名前的にネコ科の雰囲気でもなさそうです。

ベヒーモスと云うと、Fallout3のスーパーミュータントが好きです。
消火栓を鈍器に、ショッピングカートを背負い、
盾には乗用車のドアを装備した、惚れ惚れする巨体。
たまらん。

■ゴーレム
表面の水分が飛んだ、カサカサした粘土人形を心掛けました。
巨人にならび、私の好きなモンスターです。

何かを忘れていると思ったら、
体が崩れそうなレベルの大きなヒビ割れを描いていません。
その巨体が特殊な力で維持されているのなら、
見た目の脆さは、気にする必要など無かったのです。

どこまでも素人要素が抜け切らない私でした。


以上、8点でした。

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