-聖書の人々 完全ビジュアルガイド-


■発行:カンゼン
10点を担当しています。
2010年8月〜9月にかけての作業です。

(その他の情報は、Amazonを御覧下さい)

■「日本の神々」のシリーズに続く一冊となります。
聖書に関わる人物を扱っており、全体数も半端ではありません。

その内容から、どう取り扱うか真剣に悩んで取り組みました。
私は特定の宗教を信仰していないためです。
宗教観が個人によって異なる以上、仕事と割り切って描いています。

結果として指示なり資料なりに傾倒した仕上がりになりましたが、
宗教はデリケートなものであると考えているので、
あえて個人的な感覚は入れずに描いたものが多いです。

その意味において「絵的に退屈」と思われるかも知れませんが、
装飾や部品の少ないデザインにおける「影」の入れ方について、
かなり学ぶことが多かったように思いました。

あまり描き込めなかったので、サンプルはなしです。

■イシュマエル
次に描いた「ハガル」の息子。

今のところシリーズ中最年少です。
描いていた当時は色々なラフに修正指示が出ていて、
混乱しながら進めた結果、これが一番の影響を受けました。

もちろん悪い意味でですが……。
■ハガル
アブラハムの奴隷でしたが、彼の妻サラに子供が出来ないため、
サラの代わりに息子イシュマエルを身ごもることとなった後、
それからサラを軽視するようになったという女性。

それなら天罰か何かが当たりそうなものですが、そうでもないようです。
「サラを軽視するハガル」なのか「その後のハガル」かで迷い、
最終的に担当さんへ指示を仰いで描きました。
■ファラオ
エジプト風味にしたこと以外は、とくに滞りなく描き上がっています。
エジプトというと、私にとっては神々のほうが一般的であるため、
普通の人間を描くのはなんだか奇妙な感じがします。

最近は男性の顔を描くのが楽しいです。
二枚目でなく「こんな顔の人っているよね」みたいな顔は、
かなり微妙なバランスの上で保たれているのだと気付きました。
■エフタ
娘を生贄に捧げねばならなくなり、自らの衣を引き裂いて嘆いた男。
色々な資料を見ると、着ている服が一着だったり二着だったり、
鎧を着ていたりマントを羽織っていたりと……一定しないようなので、
ほかの作品と差別化するためにも鎧を着せました。

このページを観ていた妹に「セーブしてへんのに!」と云ったら、
想像したのか吹き出していました。

■ハンナとペニナ
この二人の関係も「ハガルとサラ」に似たような感じです。
この場合、軽んじられていたのは向かって左のハンナ。

今回の作品全体に云えることですが、衣装選びが困難でした。
当時を重視するべきか、後の宗教絵画に倣うべきかで悩み、
結局は担当さんの提供資料に従う形におさめています。
パフスリーブは一般的だったのかな。

■ソロモン
72柱の悪魔を封印したともされる古代イスラエル王ですが、
歴史的な裏づけはないとか。

当初は老人でしたが、年齢を引き上げるよう修正指示が出ています。
衣装も白基調だったものをメインに赤を据えています。
白だと聖職者に見えたからです。

ほかの作品にしろ、文字が入れづらいのは大変です。
■エレミヤ
その予言によって、度々投獄の憂き目にあう人物。
仮にも罪人の扱いを受けるわけですから、衣装は質素にしたのですが、
これに限らず、今回は全体的に衣装が地味で苦労しました。

しかし、それ以上に困ったのは髪型の選択肢があまりないことです。
全て資料に合わせる必要はないものの、特徴が少ないので、
大体はポーズや表情に走る結果になっています。
■大ヤコブ
もとは漁師だったそうです。
巡礼杖と帆立貝は、彼を指し示すアイテムでもあったので、
衣装の地味さを避けるため、より中央に近い位置に据えてあります。

なんとなくスターウォーズの気分でした。
EP2のオビワンみたいな髭だから?
■カイアファ
あるいはカヤパ。
特徴的な胸部の前掛けは、いくつかパターンがあるようですが、
横3・縦4列は固定であるようです。

「裕福」がキーワードでしたが、装飾も難しいです。
時代によってデザインの向きが異なるので、悩みの種でした。
■アナニア
「目から鱗」という言葉の起源ともなった人物です。
容姿について特に注文がなかったので、
ダマスカスの聖アナニア教会にある像を参考にしました。

以上、10点でした。

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