芯を失いかけた一本のロウソクに照らされる、 |
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よく分からない文章を読み終えると、 閉めたはずのドアが少しだけ開いているのに気付いた。 床には題名も記されていない、さして厚くない古書だけがある。 誰が置いて行ったのだろう。 自分はなぜここに居て、ここはどこなのだろう。 ドアは誰が開けたのだろう。 古書を手に取り、多くの挿絵と文字を流し見ると、 書き置きを残してドアを開け、何も見えない空間を覗いてみた。 部屋にあるロウソクの炎が、燃え尽きようとしている。 ドアの外の左右に伝う壁は、どこまで続いているのか分からない。 そしてドアの外に続く空間の先に、誘うように新たなロウソクが燈った。 炎が現れる時にも、誰かが点火するような瞬間は見えない。 床は何度も汚水が染みたような、表現しがたい色彩を放っている。 炎は壁を照らすことなく、暗闇の真中に光る皿を置いたように見える。 部屋のロウソクは、間もなく燃え尽きる。 もしかしたら、誰かがこの部屋に訪れるかも知れない。 手紙を残しておこう。 これを読んでいるあなたは、私と同じ状況だったろうか。 …『正しい選択』とは、何のことなのだろう。 |