-Vritra-

我は人の憎悪が産み落とし龍。
人は蔑み、妬み、侵し、汚す。
そして人を統べる神々もまた堕ちゆく者。

インドラはヴリトラハンに非ず。
まことヴリトラを滅ぼす者、我をおいて他に在らず。

人よ、神よ、汝らには滅びの他に道はない。

我が名は怒れる龍ヴリトラ。
退け! 神々よ! そして人間ども!

ヴリトラ
Vritra
ヴリトラ

■1999年作品
■[1600*1200]
■[1024*768]
■[線画]

インドの叙事詩「リグ・ヴェーダ」に登場する巨龍ヴリトラ。
彼は人の憎しみから生まれ、その名の意味を「遮る者」とします。

漆黒の体、白い牙、黄金色に輝く眼。
大海を飲み干し、大地を引き裂き、月と太陽すらも追い回し、
神をも凌ぐ力を持つ驚異的に大きな龍です。

神々へ復讐を募らせていた造物主「聖仙カシュヤパ」、
あるいは、インドの最高神「インドラ」と対立していた、
工芸の神「トヴァシュトリ」から造り出されたとされます。

産まれ落ちると共に神々へ戦いを挑んだ ヴリトラは、
至上の力を持つが故に、神々すら彼に敵うことはありませんでした。

これを恐れた最高神インドラは、
「所有地の半分を明け渡す」という条件で、ヴリトラと和平を交わします。
しかし、これは計画あっての和平でした。

インドラはヴリトラと永遠の友情を誓いますが、これは偽りでした。
ヴリトラの妻として嫁がせた女神「ラムバ」と結託し、
スラー酒(禁酒)で酔わせて眠らせると、ヴリトラの寝首を掻いたのです。
こうしてインドラは、「ヴリトラハン(ヴリトラを倒した者)」の称号を授かります。

この卑怯な方法から、一部ではインドラを批判する神も居たそうですが、
事実上、ヴリトラを倒せる神など一人として居なかったため、
その功績を認めざるを得ず、逆らう者は居なかったそうです。

また、これらには別説もあります。

神々から「悪魔の一族」だと弾圧たダイティヤ族の「聖仙カシュヤパ」と「デティ」は、
その息子たちをことごとく殺され、デティは嘆き悲しんでいました。
これを見たカシュヤパは怒り、神を倒し得る者が現れるよう天に祈り、
そうして現れたのがヴリトラだとされます。

ヴリトラの力によって、地上には全く雨が降らないために干ばつとなり、
これに苦しんだ人々も、ヴリトラを倒せる者が現れるようにと天に祈り、
そうして現れたのがインドラだそうです。

インドラの力は凄まじく、あまりにも強大であったため、
インドラは、インド三大神である「ブラフマ」に相談しました。

すると「聖仙ダディーチャ」の助力を得るように云われため、
ダディーチャを訪ねると、彼は自らの命を絶って骨を差し出しました。
この骨を、工芸の神「トヴァシュトリ」が武器に作り変え、
これが「ヴァジュラ」になったそうです。

長い闘いの中、ヴリトラの弱点を見つけたインドラは、
ヴリトラが凄まじい吼え声を上げると、彼の口にヴァジュラを放ち、
その末にヴリトラを討ち果たしたとされる説です。

このように、工芸の神「トヴァシュトリ」位置付けが違います。
またヴリトラは、その後も何度か復活したとする説もあるそうです。


・ぐら師匠へ贈呈しました。
 また2001年、「UniqueTunes」UMEO氏の個人販売の音楽CD に、
 パッケージ用イラストとして採用されました。

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