-よくわかる「世界の死神」事典-



(★文庫本サイズです)
■発行:廣済堂文庫
描き下ろし分11点(モノクロ)を担当しています。
2009年9月頃の作業です。

(その他の情報は、Amazonを御覧下さい)

■「死」に関わる神だけ集めた、珍しい一冊。
神々や悪魔、怪物などの事典とは毛色が違います。
その切り口と着眼点に惹かれ、描くことになりました。

一口に「死に関わる神」と云っても、人の寿命を決める神や、
死後の世界で「行き先」を決める神もおり、様々です。
そうした神あるいは存在についての事典になります。

折しも実家の引っ越しで、昼と夜とに大忙しの日々でした。

発注の時点で、本文が明らかになっているのも珍しいことでした。
これまでは本文が明かされないまま仕事をしていたため、
イラストと本文で齟齬が生じ、その隔たりに凹んだりしましたが、
そうした問題がなく、作業は円滑でした。

とは云え、本文で容姿に繋がる情報が少ない場合は、
相談して決めたり、ほかに色々と調べる必要もあり、
その部分に費やす時間は、あまり変わらなかったりします。

■ハーデース(プルートー)
第一章の最初は、私が描くことに決まっていたそうです。
残りの10点は希望したものの中から割り当てられており、
ハーデースを含めて10点だと思っていました。

私が描く老人って、いつも怒ってますよね。
たまには柔和に描かないと、歳をとるのが怖くなりそう。
もう怖いけど。
■モイライ
左の画像は一人ですが、三人が描かれています。
描き分けが、多少の顔立ちと髪型だけになりました。
それなりに年齢や性格を含めて描いたつもりでしたが、
やはり私は女性を描くのが苦手らしいです。

なぜかクレー○ーサイド雑貨店の主人を思い出します。
「ちょっと全身複雑骨折してきて」とか云われそう。
でもサバイバルガイドの著者表記については「いい女」。
■ヘル
左手の取り回しにこだわってみました。
けだるい手つきは難しいのですが、やる気が湧くのです。

提供資料(本書テキスト)では触れていませんが、
彼女は生者と死者の肌を持つため、左右で色が違うのだそうです。
死者のほうには死斑を入れました。

地味な熊手は、意図的なものです。
ちょっと豪華にしてみたら、「高そうなフォーク」に見えたので……。
■バーバ・ヤガー
ヤガー婆さん。
ホウキは煩かったので描いていませんが、
改めて見ると密度が低いので、やはり描くべきでした。
手は、あえて大きく描きました。
モンスター的な要素として、私がよく使う手法です。

臼に乗って移動する様は、「『世界の魔神』がよくわかる本」にて、
菊地氏が描いたものが格好いいです。
■スラオシャ
ゾロアスター教における中級善神(ヤザタ)の一人。
細かい外観指定は提供資料にもなかったので、
あくまで注文から受け取れる情報のみで描きました。

顔を大きく描きすぎたので、鎧を着ていると云うよりは、
鎧そのものが彼の体に見えてしまいます。
■死の天使
これも提供資料には姿について触れられていなかったので、
何らかの意味をもたせる上での格好にさました。
なので、「なんでこんな格好なのか」と云われても困ります。

名前が固有名詞っぽくないので、絵的にも地味になりがちです。
■中国の閻魔
姿そのものは、日本の閻魔大王と大差はないらしいです。
提供資料でも姿形に関するデータは殆どなかったので、
描き手としても、「どっちつかず」に描かざるを得ませんでした。

子供の頃、「舌を抜かれる」、「釜茹でにされる」という、
地獄で最も有名な責め苦が、怖くてたまりませんでした。
だからと云って善人に育つわけではないようです。
■鬼
注文では「鬼卒(きそつ)」として表記されていましたが、
本書テキストでは、表記が逆になったようです。

私は筋骨隆々の大男(もっと云えば巨人)が大好きで、
「代わりに頭が弱い」という設定を苦々しく思う人間です。
いいじゃないですか、大男で頭が良くても。
私はヤワでバカですけど。
■アイツア
ニュージーランド先住民「マオリ族」に伝わる死の使い。
長いこと神々や悪魔を扱ったものを描いてきましたが、
聞いたこともない名前でした。

マオリ族は顔に刺青を施す民族ということで、
「彼らの死」に近しい存在として、刺青を入れてみました。
■ミクトラン・テクウトリ & ミクトラン・シワトル
アステカの死神で、左の画像は一人ですが、
傍らに配偶者である「ミクトラン・シワトル」が描かれています。

「紙」で作られた服を着ているということで、
全体的に乾燥した感じにまとめてみました。
多少、「テスカトリポカ」が混ざったことは否定できません。


■ゲーデ
黒人奴隷の中から誕生したヴードゥーの死神。
比較的、死神の中では若い部類なのではないでしょうか。
なんとなく、ジム・キャリーの「マスク」みたいです。

描き込みが少なく、最後の一枚は楽かなぁと思っていましたが、
衣装のバランス取りに、意外な時間を食っていました。

酒に焼けた声か、あるいは甲高い声で喋りそうですね。


以上、11点でした。

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