-「世界の魔神」がよくわかる本-



(★文庫本サイズです)
■発行:ぶんか社
サイト作品の引用分が合計10点、
描き下ろし分は20点を担当しています。
2009年1月から2月にかけての作業です。
菊地鹿人氏も担当されております。

(その他の情報は、Amazonを御覧下さい)

■これはとにかく大変で、反省の多い仕事でした。
ちょうど眼科にかかった時期でもあります。

当時は別件3つで、それ自体も原因の一つでしたが、
画稿の仕様が終盤まで分からなかったので、
作業を開始できる段階でも、しばらく白紙でした。

作品の引用は、当初から先方が御提案されていました。
あとは構成上の不足分を描き下ろすことになり、
それについてはモノクロという形になっています。

最後まで背景の指定がなかったため、
テクスチャを敷く予定でしたが、無地になりました。
いざ製本された状態を見るとスカスカでしかなく、
せっかく菊地氏も居るのに、敷居が高いです。

とは云え、一つの大きな学習をしたので、
反省点に目をつむれば、とても意味があった仕事で、
なにより菊地氏と仕事が出来たことが収穫でした。

サンプルは、サイズ不問で10点の許可を頂けました。
先方の御意向で、それぞれ署名を入れてあります。
以下、所感や反省と共に御覧下さい。
(本書の掲載順で揃えてあります)

■バアル
縦長サイズの一枚目で、端(はな)から構図に苦しんだポーズです。
ラフも既にいっぱいいっぱいで、見通しを伝えるためだけに描き、
結果、そのラフにしがみついて完成させてしまった一枚です。
モノクロ項の最初の一枚にもなり、今は反省点しかありません。

■モレク
縦長サイズの2枚目です。
これ一枚だけ奇妙に大きくフレームアウトされている(枠をはみ出している)のは、
原画がフレームアウトしておらず、胴から下が描かれていないためです。
「牛には上の前歯がない」と知って、慌てて描き直した憶えがあります。

■アバドン
半寸15枚の最初の一枚目です。
取って付けたような顔に凝らなかったので、変に浮いて見えます。
これは半寸イラスト(計15枚)の最初の一枚で、どう取り回すか悩みました。
この後に続く残り14枚を前にして、途方に暮れながら描いた憶えがあります。

■アンラ・マンユ
「どうなってるの」と聞かれた私も返答に困る一枚です。
この仕事で重要なのは、指定(注文)と独創(作風)の中間をとることで、
とくに指定のない姿の場合、本の雰囲気も計算に入れる必要がありますが、
結果、姿は本書でも触れられていないので、「概念」だけとして描きました。

■イフリート
背景に敷くはずだったテクスチャを、全て白紙に戻す原因になった一枚です。
無地の部分には、編集で何らかの文字や色が重なる場合もあるため、
炎のような複雑な形のエフェクトは、合成しづらくなることもあるのです。
それを踏まえた上で白紙に戻しましたが、何かと合成されることはありませんでした。

オロバス
割とすっきり収まった一枚です。
これに限らず、半寸の殆どは編集でフレームアウトされ、
原画時の状態に比べ、やや「寄り」でレイアウトされています。
馬の横顔が多少マシに描けるようになった気がしました。

アカ・マナフ
描き下ろし20点中、最も気に入っているデザインです。
耳のあたりから腕が生えていて、あごを包んでいます。
「アンラ・マンユ」と同様、姿に関する指定がないまま描きましたが、
こちらは幾らか思い通りになったと感じています。

■バロール
「魔の眼」に重きを置いたので、とくに工夫のない絵なのですが、
ふと、クローネンバーグ監督の「スキャナーズ」を思い出し、
あの雰囲気で描いてみようかな、思って進めました。
観た人なら分かると思いますが、あの映画って眉間が疲れますよね。

■アモン
サイト作品や楽描きでも描いた一枚で、後者が元になっています。
本書中ではフレームアウトされていて、斧が殆ど入っていません。
途中で「体には羽毛を」と云われた手前、全身かどうかを聞きそびれ、
結局は全身に施す作業に終われ、中途半端になっています。

アザゼル
縦長サイズの3枚目です。
これもとくに指定がなかった種類で、本文の説明とはかけ離れています。
筋肉に主眼を置いて描き始め、ほぼ全身がすっぽり収まりましたが、
モレクと同様にフレームアウトしていて、手と足が殆ど消えています。

ベリアル
縦長サイズの4枚目です。
「きっと戦車を描かないとリテイクになる」と思い、色々と調べました。
映画「ベン・ハー」の戦車競争を参考に、少し小型にして描き始めましたが、
よく考えると一人用で地上を走るとも思えず、どこまで再現するか悩みました。
装飾が貧相なのは、この時点でかなり焦っていたからです。

■バラム
フレームアウトしており、翼の大部分と両手の先は見えません。
ラフでは人頭に角があったものの、本画で修正されました。
これこそ縦長サイズで熊も描きたいところですが、
横長では厳しいため、不足分は本文説明に委ねることになりました。

カイム
かなりフレームアウトしており、妙に不安になった一枚です。
問題の多くは鶫(ツグミ)の頭にだけ集中しており、
ほかはとくに悩むことがなかったので、記憶に薄いです。
現存動物がベースの場合、どれくらい作風を入れるか悩みます。

ガープ
数ある悪魔でも、最も描き易い悪魔だと思います。
ポーズはすぐに思いついたので、あとは筋肉のことだけ考えましたが、
編集後は「背中に翼」となっていて、事前に聞けばよかったと後悔しました。
頭皮に血管のような模様を入れるのは、この作品がきっかけです。

パズズ
縦長サイズの最後で、これも足先がフレームアウトしています。
映画「エクソシスト」で有名なデザインに揃えるかどうか考えた末、
ラフのリテイクは避けたかったので、資料通りにまとめた一枚です。
ちなみに、モンスターハンター2nd・Gの、あの曲を聞いて描きました。

バフォメット
ラフから乳首を描くかどうか考え、結局は聞かないまま描きました。
ボディービルでもやってそうな女性の胸ですが、それでいいような気もします。
額の六芒星を上下逆さまにするべきだったか、今でも悩んでいます。
マークとしては逆さまですよね。

■ヒュドラ
「頭は9つ!」とリテイクが入ったものの、編集で七つになっています。
この絵を描く頃になって、今回は口を閉じた蛇が多いと気付きました。
疲労は描いているものにまで口を閉ざさせるのでしょうか。
これに限らず、ページ左右のどちらに掲載されるかは知らなかったりします。

■キマイラ
背中に山羊の頭がないタイプのキマイラです。
ラフには頭もありましたが、リテイクで削除されました。
終盤でこの「たてがみ」の描き込みは辛いものがあり、
親指の感覚が麻痺して、休み休み描いた憶えがあります。

ケルベロス
「ヒュドラ」でも触れたように、左右どちらかは知りませんでしたが、
きっと編集でカットされると思い、半ば賭けで右を断ち切りました。
編集前では奥の頭が顎まで描かれています。
この構図は前にもやったような……。

アエーシュマ
血が付着した棍棒を持った姿で描かれていますが、
編集後は血も棍棒も見えなくなっています。
これも「ケルベロス」と同様、右の棍棒の半分を断って描きました。
最後の一枚なのに、なぜか最後に修正したのは最初の一枚目(アバドン)です。

■引用分(それぞれ本書上の名称で記し、リンクは作品ページへ飛びます)

★表紙&口絵&本編モノクロ
アスタロト

★口絵カラー&本編モノクロ
サタン
ルシファー
ベルゼブブ
マモン/マンモン
アスモデウス

★本編モノクロ
リヴァイアサン
ベルフェゴール
アジ・ダハーカ
ティアマト

以上の10点となり、「七つの大罪」は全て入っていることになります。

どのように編集されるかは分からなかったので、
合成の障害になると判断したエフェクト部分は、大幅に除去しました。
それぞれ非常に大きなファイルで、処理が重く作業が長引いてしまい、
このあたりから酷い頭痛に苛まれ、その後に眼科へ行ったと思います。

当然ながら過去の作品で、もう修正のしようがないのは確かですが、
先方に気に入られたと云う意味では、昔の自分を肯定される感じがして、
寝不足になりながら描いていた当時を思い出しました。


以上、20点+αでした。

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