-Amon-

力なく、気高さなく、
生涯をかけて恥を晒す下賎な豚、
我がもの顔で地上を闊歩し、
間抜けた繁栄を繰り返す痴れ者よ。

神に踊らされていると気付ぬのか。
見ろ、その眼でしかと天を仰いでみよ。
神の嘲り笑う声が聴こえるか?

聴こえまい!

貴様らはその声に耳を塞ぎ、
汚れた楽園で手足を投げ出す、
まるで無様なヒキガエルだ。

我が名はアモン。
我と我が名と我が力は、
貴様ら全てを消し滅ぼすに足る。

身の程を知れ、人間ども。
今のうちに己の愚かさを嘆いておくことだ。

アモン
Amon
the Flame tyrant

■2000-12/08作品
■[1600*1200]
■[1083*768]
■[線画]

彼は数多くの悪魔にあって、ひときわ不可解な存在です。

その名を意味を「隠されし者」、「底知れぬ者」、「計り知れぬ者」とし、
どの書を紐解いても、彼を裏打つ記述は見当たらないとされます。
固有の性質を持たないのが、彼を彼たらしめる由縁かも知れません。

アモンは、その起源を古くエジプトに求めます。
エジプトで水は「アマン」と呼ばれることから、
まずこの発音の相似から「海水の神」とされ、
その経緯によって「海の神(創造主)」として捉えられます。
海は生命の源ですから、然るべき位置付けと云えるでしょう。

その後 豊穣の神「ミン」と融合して「アモン・ミン」となり、
更に太陽神「ラー」と融合して「アモン・ラー(アメン・ラー)」となります。

これだけの強大な神との融合を果たし得たのは、
やはり彼が固有の性質を持たないためと思われます。
「朱に染まれば紅くなる」が如く、何色にも染まり得るのです。
彼の姿に以下のような諸説が有るのも、恐らくこのせいでしょう。

・頭に二枚の羽毛を飾った青黒い肌の人間
・羊の頭を持つ人間の姿、あるいは羊の姿
・ガチョウの姿

ガチョウは「ミン」のシンボルなので、
この姿はミンと融合した後のものでしょう。

続いて中世以降の悪魔学では、また姿が変わっています。
大鴉(オオガラス)、フクロウの頭を持つ人間、蛇の頭を持った狼、
または、顔がフクロウ、胴体は狼、尻尾が蛇など……。

解っているだけでも、彼の姿はここまで多様を極めています。
この辺に、固有の性質を持たない彼の特徴が現われています。

ともあれ、「ミン」にせよ「ラー」にせよ、そのシンボルや化身としての姿は、
どちらも「ガチョウ」、「ハヤブサ」と、“鳥類”であるため、
アモンを象徴するものは鳥の頭とするのが一般的かも知れません。

また、魔界ではその冠位を侯爵とし、「炎の侯爵」と呼ばれることから、
上記のどの姿にも関わらず、彼の口からは炎が吐かれるそうです。

なぜ「マンモン」とアモンが同一視されるのか。
それはアモンとマンモンの名前の似ていたことのほかに、
アモンが他の神を吸収し、力を得る事に貪欲だったことと同様、
マンモンは財宝や貴金属を得る事に貪欲であったためだとされます。



・「七つの大罪シリーズ」を描き始める切欠となった作品です。
 もともとは、「鳥頭の悪魔が描きたい」と云う欲求だけで描き始めました。

 鳥頭の悪魔に「アモン」が居ることを知り、
 都合よくその名を冠しただけのことでしたが、
 「マンモン」と同一視されていることを知らなければ、
 七つの大罪も描かず終いだったと思います。

 この作品は、イラストを頂いた 人丸氏へ贈りました。

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