Thoth

汝、まこと正しき死者か。
これより先、死者の国に迎えられたくば、
己の行いを読み上げ、正しき魂か否か、
我らが君の前で、証し立てねばならぬ。

秤に“汝”を載せるがよい。
我らの認めし魂のみが、死者の国へと歩み進める者。
罪の枷を引きずる者は、永遠に正しき死者となること能わず。

さぁ……我は汝の行いを書き留めよう。

Thoth
- Dhuti -
トト / ジェフティー / ジェフゥティー

■2002-11/08作品
■[1600*1200]
■[1024*768]
■[線画]
■[ウアス]

正式なエジプト呼称は「ジェフティー(ジェフゥティ」です。
「トト」と云う呼び名はギリシャ人が呼ぶ時に使った名とされ、
現在では、トトという呼称が一般的です。

彼の名の意味は、「選ぶ者」、「使者」など、数多くが存在しますが、
大半は後世の学者による仮説の域を出ないものばかりで、
エジプト人は、「ジェフトの」、「ジェフトなる者」と呼んだそうです。

トトは造物主であり、神によって創られた者ではないとされます。
そのため、「石の息子(非生命から生まれた存在)」、
「卵から産まれた者(卵生の者)」ともされます。

朱鷺(トキ)、或いは「聖鳥イビス(イビス鳥)」の姿をとりますが、
時には狒々(マントヒヒ)や、猿の顔であることもあります。
擬人化されると、朱鷺の頭をした男性の姿をとり、
アテフ(王冠)を被っていることもあります。
時が進んでからは、完全な人の姿でも描かれました。

また、医療行為でもある浣腸はエジプトを起源とし、
聖鳥イビスが 肛門から水を差し入れる伝承に由来するそうです。
エジプトの他には、メソポタミア、インドなどでも知られています。

アヌビス神の項で触れた「プシコスタジー」で用いる神聖なる筆記用具か、
アンクと、ヒエログリフの印である「ウアスの杖」を持った姿で描かれます。
神聖なる筆記用具とは、インク皿とカラムと呼ばれる葦筆(あしふで)です。
ウアスの杖は支配や統治を表わし、アヌビスやセトを象った杖であるとされます。

彼を示す元素は大気で、象徴される色は、黒・白・赤(朱鷺の色)です。
一般的な トトの容姿に用いられるのは、アフリカクロトキのようです。
この場合、実在のアフリカクロトキは黒と白の色を持つので、
どの辺りに赤色が含まれるのかは不明です。

トトの起源は謎が多く、未だ詳細が解かれていません。
但し、トトを信仰しない神殿は存在しないと云われています。
ノモスでは第15ノモスの主神とされました。

秩序を組み上げて物質を構成し、それによって宇宙を形作り、
その宇宙をどのように働かせるか、それを成したのも彼です。
数字(計算)、時間(年月)、医療、魔術の代名詞としても扱われ、
このため、彼は言葉を紡ぐ者、ひいては知性を司る者となりました。
時を知ることから、月の神であるともされます。

トトの傍らで、プシコスタジーや死者の導き、
魂の計量を勤めるのが、黒犬の頭を持つアヌビス神(インプゥ)です。


■所感
・アフリカクロトキの頭部は本当に真っ黒で、体表のシワなども読み取りにくいです。
 トキの脚はこのような形状ではなく、力強さを出したかっただけの演出上の造形です。
 トトにもアヌビスにも髪(または「たてがみ」)と云えるものは有りませんが、
 ヒエログリフに描かれる彼らの頭部から伸びているのは、髪だと思っています。

 エジプトの女性は、とてもおしゃれだったようで、
 基本的に自分の頭髪は短く、美しい長髪はカツラだったそうです。
 カツラには、紅く染めたもの、金糸を編み込んだものも作られたようで、
 エジプト人の肌も、浅黒い肌ばかりではなく、色白な人も居たとされます。

 最も苦労したのは「ウアス」で、何が辛いかと云えば「形を与える作業」です。
 ヒエログリフで表わされるウアスは、とにかく造形が簡素すぎます。
 バランスをとる為には、やはり ウアスの造形にも凝る必要がありました。

 以下、ヒエログリフのウアスから、私なりのデザインになるまでの過程を載せてみます。

(01)ヒエログリフでのウアス



(02)原型を維持しつつ加筆



(03)最終形

こんな単純極まる造形も、カッコ良くせねばなりません。
結局、ウアスの頭部は「アヌビスやセトを象ったもの」らしいので、
後者を選び、「架空生物の頭部を持つ」と云われるセトをイメージしました。

■聴いていた音楽
 ・アヌビスと同じ

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