-幻想世界の神々 イラスト大辞典-

■発行:宝島社(別冊宝島)
カラー4点を担当しています。
2008年12月から翌年1月にかけての作業です。
(その他の情報は、Amazonを御覧下さい)

■サンプルはトリミング画像1点のみです。

前回に引き続いて仕様も同じでしたが、
別件2つが同時進行で、かなり忙しい時期の仕事です。
終盤は疲労と緊張で血圧が跳ね上がり、
あと一歩で倒れるくらいまでにボロボロでした。

スタンダードなイメージで描くことも重要な反面、
それだけでは退屈な作品になりがちなので、
最初から、何か吹っ切った気分で挑んでいます。

前回と同様に、ラフは未公開です。

■アヌビス
描き始めだったせいか、また悪いクセ(様子見)が出ている作品です。
サイト作品に比べると装飾も大人しく、地味で面白味のない一枚になりました。
両親が書道に携わる身分なので、ふとそれを思い浮かべた時、
筆の力強さを活かせないかと考え、この作品が皮切りになっています。

「吹っ切る」というのは、主に線画の太さです。
以前から私の作品には、腰のなさと云うか、ドスンとした腹持ちの良さがなく、
お粥ばかりを食べさせられるような、そんな絵的な弱さが気になっていました。
この作品そのものの反映度は少ないものの、良い機会になったと思います。

アヌビスは、ミイラ作りに携わる神官の「被り物」としても用いられたようで、
そのミイラ作りの部屋を前にした、暗さと陰鬱さを目指しました。

■ガネーシュ(ガネーシャ)
5年くらい前に、サイト作品のために10冊近い本から注目点を書き出し、
自分でまとめたデータが役立ちました(文字量は、このページ5倍くらい)。

持ち物は、それぞれガネーシャに所縁があるとされる物を選び、
ジャパマーラー(数珠)、象牙、戦斧、アンクス(象使いの調教棒)です。
破れた太鼓腹を締めたとされる、蛇の腰帯(本物の蛇)も描きました。

ガネーシャは通常2対か3対の腕を持ちますが、検索すると2対が多く、
本書中で腕の数について記されるかは分からなかったので、
ラフから3対で描いています(後日、本書では2〜4対だと知りました)。

インド象とアフリカ象では、鼻先の指状突起や、耳の大きさが異なるのですが、
私が象を描くと、冠で頭部が隠れるのもあってアフリカ象に見えます。
背景は、「神の暮らす自然界って、どんな感じだろう」と思いながら描いたところ、
ふわふわした、なんだかよく分からない景色になりました。

■アシュタロテ(アスタロト)
アヌビス、ガネーシャに続いて描いたことのある作品なので、
楽しんで描けるはずでしたが、ドラゴンが納得行きません。
構造的にも、もっとガチャガチャと描き込みたかったです。
眼のないドラゴンは、「ザッハーク」の時から気に入っている描き方です。

ドラゴンの体表に、普段あまり使わない配色を施したのは冒険でしたが、
私の作品は、放っておくと色合いが退屈になる傾向が強いので、
たまにこうして挑戦を含めた遊びもします。
ただ、忙しさから体表の描き込みがやっつけ気味です(とくに頭部)。

狭い狭いと思っていた縦長紙面が、妙に広く感じた作品でもあります。
そんな中、力いっぱい翼を広げられて気分が良かったです。
多少、顔の描き方がマシになったかな、と思っています。

■テスカトリポカ……★サンプル
正確には「ヤヤウキ・テスカトリポカ(黒き煙る鏡)」でしょうか。
アステカ文明の神々は大好きで、色々と勉強した時期もありましたが、
ことイラストとなると、全く描いたことがありませんでした。

モクテスマ2世が、コルテスの来訪をケツァルコアトルだと信じた話を思い出し、
「醜い姿や奇妙な力を持つ人間は、神や悪魔として特別視されるのでは」と考え、
その想像の延長として、「醜い顔の人間」として描いています。

テスカトリポカと云うと、大英博物館のモザイクマスクが有名ですが、
絵文書では、黒い体の顔に黄色い縞模様が入るそうですし、
化身の一つにジャガーを数えるので、肉食獣のような獰猛な顔にしました。
目立ちませんが、腰巻の黒い斑点もジャガーの要素です。

失敗したなぁと思ったのは、
「NHK大英博物館-6-マヤとアステカ・太陽帝国の興亡」を忘れていたことです。
本を妹に貸したままだったので、参考にするのを忘れていました。


以上、4点でした。

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