-Pride-

神よ、あなたはこの者に未来永劫、解けることのない呪いをかけた。
肩身を震わせる者、お前は神に呪われてしまった。

見よ、人の子の心は斯様にも移ろい易く、傷つき易い。
見よ、人の子の体は斯様にも脆く、容易く崩れ行く。
見よ、人の子の魂は斯様にも幼く頼りない。

神よ、あなたはこれを見て何を成せと云うのか。
赤子のように無垢な魂は、永久の安閑を求めて止まない。

しかれども神は、このか弱き魂を千尋の谷に突き落とした。
燃え尽きぬ炎でその身を焦がし、千早振る刃を以ってこれを斬りつけ、
吹雪に身を晒せて温もりを奪い、薔薇の棘で縛り上げ血の一滴を残さず絞り取った。

神よ、あなたは これ以上、この者から何を奪わんとするのか。
この者は強さと英知に満ちた 神の如き者ではなかったが、
ひとつの魂として世界を歩き、正しき道を求めて彷徨い、
心の内に ささやかなる幸いを願う者ではなかったか。

この者から全てを奪って、この者に生きる価値など有ろうか。
この者は己が産み落とされし意味を 知る事など出来ようか。
この者に更なる重荷を課し、これからの歩みを望めようか。
この者は己の呪うべき人生を 全うする事など出来ようか。

見よ、いつ受けられるとも知れぬ祝福を目の前に、
この者は志半ばにして 倒れようとしている。
なればこそ この者に、苦痛からの解放が必要ではあるまいか。

見よ、両足を朱に染めて長き道を行く者は、その背にある荷を捨ててしまった。
終わりなき 責め苦から逃れんとし、暗い闇の奥底に 身を委ねてしまった。
僅かな陽光も差さぬ暗黒の中に、永久の安閑を 見出してしまった。

されど我は、これを救う者なり。
しかして この魂に、戒めを宛がわぬ者なり。
我は等しく全ての者を 求めるままの欲望で満たす者なり。

我が名はルシファー…神を告発する者。
地獄にて彷徨える魂を、誠 無に還す者。

我 暗黒の者。

Lucifer
- the Bright Morning Star -
ルシファー / ルシフェル / ルキフェル
<<ベルゼブブ/サタン>>

■2002-06/18作品
■[1600*1200]
■[1024*768]
■[線画]

”驕り”・”傲慢”
世界で最も名の知れた堕天使であり、
七つの大罪の内、「高慢」を司る大魔王・ルシファーです。

ルシファーは、その名の起源をヘブライ語の「ヘレル・ベン・サハール」とし、
この「明るい朝の息子」と云う言葉は、「明けの明星(金星)」に結び付けられました。
ラテン語の「ルシフェル」は、ウルガタ聖書(※)での呼び名です。

※ウルガタ聖書
  ヘブライ語旧約聖書、及びギリシャ語新約聖書を、
  完全ラテン語翻訳した旧カトリック公式聖書。

3面3対翼、あるいは3面6対翼の美しい天使であるとされますが、
教会などの宗教絵画では、善なる者と区別するために浅黒い肌で描かれます。
ここでの「善なる者」は、往々にして「大天使ミカエル」を指すようです。
彼はルシファーと双子であったかのように、瓜二つの顔立ちであるともされます。

天の王(太陽)を差し置いて強く光り輝くことから、
王位を狙う傲慢さの現われと解釈され、悪魔的な意味を持つに至ったようです。
その輝きが金星を指すのは、通常、多くの星が夜にしか見えないにも関わらず、
金星は夜明けでも輝くことに由来するようです。

聖書では、この明けの明星(Bright Morning Star)として記され、
ルシファーという名詞を冠しての登場はしていません。
これは旧約聖書、新約聖書を問わずに云えることです。

ルシファーはサタンと同一視されるか、
あるいはサタンの側面のひとつとして解釈されます。
また「ベルゼブブ」など多くの悪魔たちすら、その一つ考えらることもありました。
ミルトンの「失楽園」では、サタン(ルシファー)とベルゼブブが地獄で会話をしており、
この中で、天国へ再び叛逆を企てる経緯が記されています。

ルシファーは、ヘブライ伝承で最初に創られた天使だとされます。
天界九階級の中で、その階位をセラフ(熾天使)とし、
神の右側に仕えることを許された、天使長の座にありました。
強大な力とその美しさは、神の寵愛を最も強く受けたとされます。
ルシファーの美しさと高貴さは、聖書にも記されています。
(エゼキエル書:第28章 12〜13節)

己の力と美貌に酔い痴れたルシファーは、
自らは神を超越した存在だと驕り、数多くの天使たちを束ね、
これを反乱軍として、神の御座を盗むために反逆しました。

これが「高慢」の罪となって神の裁きを受け、堕天したとされます。
いわば天国で始まった下克上の顛末です。
そうして彼に代わり天使長となったのがミカエルだとされます。
(エゼキエル書 :第28章 17〜18節)

堕天した者は、燃え尽きることのない地獄の業火で焼かれるとも、
この世の終わりまで凍てつく氷の中に閉じ込められたともされます。
(ペテロの手紙・二通目:第二章・03〜04節)
(ユダの手紙・第六節)

この時、彼らは天使としての霊質を奪われ、人間と同じ体になったとされます。
この後のルシファーは、1000年の間地獄に幽閉されるとも伝わりますが、
彼は直ぐに地獄から手を伸ばし、現世に悪をもたらしたそうです。

ルシファーが冥府に落とされ、その後に生きていたとする下りには、
自分を地獄に落とした、神への復讐を果たそうとする説が有ります。
この復讐心が怒りであり、「憤怒の罪」と解釈されたことから、
「サタン」と同一視され、憤怒を司る悪魔ともなったのでしょう。

堕天という解釈は、「天から落ちた稲妻」の表象とも関連しており、
「天から降る蛇(または龍)」とされ、「雷の神」としてのイメージも含まれます。
(ルカによる福音書:第10章 18〜19節)


・左肩が脱臼しています…大失敗。
 体よりは、翼のほうに重きを置いて描きました。
 背景はタブレット描画です。


■聴いていた音楽
・カール・リヒター…トッカータとフーガ・ニ短調
・カール・リヒター…トッカータとフーガ・ニ短調・ドーリア調
・カール・リヒター…前奏曲とフーガ・ロ短調
・Marilyn Manson …COMA WHITE
・Gackt…OASIS
・L'Arc〜en〜Ciel…浸食 lose control
・THE YELLOW MONKEY…GIRLIE

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